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どうなる航空アライアンス (3) デルタ航空とアメリカン航空の日航争奪戦
経営危機に直面している日本航空(JL)に、スカイチームの盟主であるデルタ航空(DL)が提携を申し入れている。 JLは、ワンワールドのメンバーなので、DLと提携するとなれば加盟するアライアンスをスカイに変更しなくてはならないことになる。 DLは、JLに対して10億ドル(約900億円)の資金援助を惜しまないという。 そして、アライアンスの変更に伴うITシステム変更などの費用*まで負担する用意があると言っている。(* 20万ドルと想定されている) DLは、アジア最大の航空会社であるJLと提携して、世界の何処の路線よりも大きく成長すると予測されているアジア路線のシェアーを一挙に拡大することを目論んでいるのだ。 DLは、LCCの脅威に晒されている米国内線よりも国際線を拡大する戦略をとっている。 大西洋路線の半分以下の収入規模の太平洋路線を拡大して、路線間のバランスをとることを考えているようだ。 そして、昨年10月にノースウエストを $3.1bnで買収*し、今度はJLと提携してこの国際線拡大戦略を更に押し進めようとしている。(完全株式交換方式による)
(国内線にはリジョナルが含まれる)
黙っていないのはワンワールドで既にJLと提携しているアメリカン航空(AA)だ。 JLがアライアンスをスカイに鞍替えしたら、AAはアジア太平洋路線のプレゼンスを壊滅的に失うことになってしまうので その被害は甚大だ。 慌てたAAは、DLのオファーを上回る $1.1bnの資本注入を日本航空に提案した。 そして、ワンワールドの提携強化により今後10年間で、JLは更に +$700mの追加的収入を得ることができると言っている。
DLとAAの両社は、JLとの提携がまとまれば、日米両当局に競争法適用除外(ATI)を申請すると言っている。 ATIが承認されれば航空会社間の収入プール、運賃の共同設定、スケジュールの調整などの本来は競争法で禁止されている協業行為(反競争的行為)が可能となるので、提携効果は更に大きなものとなると言う訳だ。 年内にも 現在当局間で協議が進行中の日米間のオープンスカイ協定が合意されれば、スター・アライアンス加盟3社、ユナイテッド航空(UA)、コンチネンタル航空(CO)、全日空(NH)は、太平洋路線のATIを申請すると既に言っているので、これへの競争対応力も増大することとなる。
DLもAAもCEOを含む経営幹部がJLに日参して、自分たちのアライアンスへの勧誘ないし引き止めを必死になっている。 そして両社は東京で記者会見を開いて、如何に自分たちのアライアンスがJLにとって有利であるかを喧伝している。 驚いたことには、この記者会見の場にロビイスとしてDLは元運輸省事務次官のJeffrey Shaneを、AAは元運輸長官のNorman Minetaを同席させたことだ。 AAの記者会見でMinetaは、「太平洋路線のシェアーが60%を超えるDLとJLの提携は、ATIの適用が承認されないだろう」と語っている。 一方Shaneは、「既にATIが認められている米独路線に於けるスターのシェアー70%超を勘案すれば、45%程度の日米大陸間のDLとJLの提携に対してもATIが承認されるだろう」と言っている。
元運輸省の長官と次官が、公職で得た過去の知識と経験を活かして自己の経済的利得のためにそれを利用していることに何やら胡散臭いものを感じられない訳ではないが、それにしても両者は全く異なる意見を展開している。 ロビイストとして顧客のニーズに対応した商業的な発言であるけれども、両者の正反対の発言は、正にATIの承認基準が明確でなくその場の都合でかなり恣意的に判定されているという大きな問題を露呈させている。 AAは、英国航空(BA)とイベリア航空(IB)などのワンワールド加盟航空会社と共に大西洋路線でATIを申請中である。 この申請では、競争他社から強く指摘されているワンワールドのロンドン・ヒースロー空港のドミナントなシェアーについて、競争を決して阻害しないとAAは反論している。 そのAAが、今度はDLとJLの成田のシェアーが大き過ぎて競争を阻害すると言っている・・・。 前号のこのコラムでも書いた通り、オープンスカイにより競争を促進する一方で、競争法で禁止した反競争行為を認めるというのは、やはり矛盾に満ちて無理があると言わざるを得ないのではないだろうか。 航空業界にも、他産業では当たり前となっている国際間のM&Aを認めなければならない時代が来ているようだ。
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7 December 2009
Blog 牛場春夫の業界雑感
フォーカスライトJapan